GoToトラベルを中止すべきという声が多いなか、コロナ対応のまずさで菅政権の支持率は急落。最新の統計によればコロナの死者数は70代以上が85%を占め、高齢者にとっては脅威だが、若い世代にとってはインフルエンザよりも致死率が低いことがわかっている。1兆1千億円の国家予算を投じたGoToトラベルの経済波及効果は4.9兆円にも達するとされ、GoToトラベルとコロナ感染拡大にはっきりとしたエビデンスはない。GoToトラベルを停止すれば900万人の観光業従事者にとっては大きな痛手となり、年末にかけて自殺者のさらなる増加が危惧される。いかに経済を止めずにコロナ対策を行うか、国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策は菅政権の急務だ。1月11日まで1時的に中止するも、その後は明確な基準をつくり可能なところから再開すべき。
それには医療提供体制の確保をはじめとする感染拡大防止に全力をあげるとともに、経済への影響に対し、雇用と事業を支え、国民の生活を守る“守りの視点”と、グリーンやデジタルといった成長分野に民間投資を呼び込みながら、生産性を高め、賃金の継続的な上昇を促し、成長力の強化につながる施策に資源を集中投下するなど“攻めの視点”が求められる。コロナ禍で給付金の給付が3ヵ月後となったように図らずもデジタル化の遅れが露呈したのをはじめ、東京一極集中などコロナをきっかけに浮き彫りとなった課題は多い。
感染拡大防止に向け、医療提供体制の確保と医療機関への支援、検査体制の充実、ワクチン接種体制などの整備は一番の課題だ。また、ポストコロナに向け、経済構造の転換に対応するため、自治体の情報システムの標準化・共通化をはじめ、2050年のカーボンニュートラル目標に向けた技術開発への継続的な支援も不可欠。業態変換を行う企業に対して最大1億円の事業再構築補助金の創設や、未来への先行投資として10兆円規模の大学ファンドの創設も行う必要がある。単独の企業、研究機関だけで世界に比肩するレベルの研究開発を行うことは難しく、大学の施設の共用、データの連携、若手人材育成の推進、宇宙、海洋、AI,量子技術、ゲノム、バイオなどのイノベーション促進も行っていかなければならない。
併せて地方への人の流れの促進など活力ある地方創りにも注力せねばならない。そのためにはGoToトラベル事業の来年6月末までの延長、GoToイート事業の食事券の追加発行、テレワーク支援も引き続き行う。成長分野への円滑な労働移動を目指し、雇用対策として雇用調整助成金の特例措置の延長、中高年が働きながらスキルアップできる環境の整備、就労経験のない職業に就くことを希望する人への早期再就職支援なども行っていく。
医療体制逼迫は国民生活への影響が懸念されるが、1次、2次補正予算で行われた医療従事者への支援は書類手続きが煩雑で従事者の手許に届いていないのが実状だ。
世界のほとんどの国にある戦争、テロ、大災害といった緊急事態を想定した緊急事態条項がわが国の憲法にはないことが、この未曾有の危機に際して政府の動きが遅れた原因となっている。
百年に一度の災害が毎年のように各地で起きている状況で、来年度から5か年計画として国土強靭化をさらに加速する考えだ。現状のインフラの補修では間に合わず、事業規模15兆円程度の巨大地震への対策、風水害への対策を行っていく。
下村氏は「わが国の憲法は占領下に制定されたもので、独立国家であれば憲法改正すべきであったが、戦後75年経ってもわが国の敗戦後遺症は続いている」とし、自民党が野党に下野した際に憲法改正草案を策定し、緊急事態条項も入れたが、猛批判を受け、今では憲法審査会自体が開かれていない実情について説明。このほか世界に誇る皆保険制度を維持するために進められている75歳以上の負担を2割に引き上げる件、第3次補正予算についても詳細に解説した。カーボンニュートラルに向け、原油、石炭、ガス業者への業態変換についても言及。その後の質疑応答でも活発なやりとりが行われた。